研究内容

 

当研究室のこれまでの研究内容や現在の研究テーマのご紹介。

ゼオライトは、~1nm程度の規則的な細孔(pore)を有する無機結晶であり、多孔質無機材料と称される。
この細孔構造を反応場として利用した化学反応を研究している。このような細孔構造を利用した化学選択的反応は、「形状選択性」と呼ばれ、「反応物規制選択性」、「生成物規制選択性」、「遷移状態規制選択性」と三つのタイプに分けることができる。なかでも、遷移状態規制選択性は、細孔構造から成る空間により、反応の遷移状態を3次元的に規制(反応場特異性)することで、スリムな分子を優先的に生成することができる。

ゼオライトの細孔を反応場として使う

ストレートな細孔を持つゼオライトに注目し、反応条件と併せて検討した結果、2-メトキシナフタレンのアシル化反応で、スリムな生成物を高選択的に合成できる反応系を開発した。

T. Yamazaki, M. Makihara, and K. Komura, J. Mol. Catl. A: Chem.426, 170-176 (2017).

<反応機構の解明のための実験>
<我々が提案した反応機構>

M. Makihara, and K. Komura, Green Sustainable Chem., 7, 185-192 (2017)

M. Makihara, H. Aoki and K. Komura, Catal. Lett., 148, 2974-2979 (2018)

解説

有機化学では、ルイス酸触媒反応の典型的な反応として、教科書に載るFriedel-Crafts反応。ゼオライトを触媒とした反応も古くから研究されており、特に、アニソールのFriedel-Craftsアシル化反応において、ゼオライトは優秀な固体触媒として認識されている。他方、2-メトキシナフタレンのアシル化反応は、均一系触媒(AlCl3など)を使うと1,2-ACMNのみが生成してしまう。構造的にスリムな2,6-ACMNは、抗炎症・解熱作用があるナプロキセンの重要な中間体で、ゼオライト細孔を使うことで、形状選択的にスリムな2,6-ACMNが得られるはずだ!と、40年くらい前からゼオライト触媒による研究が行われていたが、実現できず。

我々は、ゼオライトの種類ではなく、反応系全体に着目。すなわち、アシル化剤+溶媒+触媒を複合的に検討した結果、世界一の2,6-ACMN選択性と2-MN転化率を実現する反応を開発した。また、この触媒反応の機構を解明するため、種々の反応条件をセットアップして転化率および選択性の経時変化を調査し、おおよその反応機構を提案した。

地球上に無い鉱物結晶を新しく創る

K-LDSの結晶構造
H-LDSの結晶構造

K. Komura, T. Ikeda, A. Kawai, F. Mizukami, and Y. Sugi, Chem. Lett., 36, 1248-1249 (2007)

T. Ikeda, M. Uenaka, K. Komura, and Y. Sugi, Chem. Lett., 39, 747-749 (2010)

K. Komura, Y. Horibe, H. Yajima, N. Hiyoshi, and T. Ikeda, Dalton Trans., 45, 15193 (2016)

 

解説

我々の研究室で扱うゼオライトは、鉱物結晶である。研究過程で新しいゼオライトや結晶の論文を読み、実際にゼオライトを合成していると、新しい結晶や新しいゼオライトを作ってみたいと思ってしまう。また、単純に学術的に見て、地球上に存在しない鉱物結晶を新しく創る。なんて魅力的だろう!と思ってしまう。

K-LDSは、potassium-type Lower Dimensional Silicateの略語で、層状シリケートの層間にカリウムカチオンが存在する新しい粘土鉱物であり、小村が命名した。以降、地球上で同じモノが発見されても、地球が無くならない限り、これは以降ずっとK-LDSと呼ばれることになる。さらに、このK-LDSを酸処理すると、層間のカリウムイオンがプロトンへと置き換わり、単純なシリケート層だけになる。層間距離が短く、比較的大きな粒子サイズであることから、層間のシラノールが水素結合し、強固な物質となっている。このため、通常X線では観測できない水素原子の配置が、ぼんやりと原子密度マップ上で見て取れる。これまた、小村がH-LDSと命名した。

GAM-1と名前が付いた結晶に着目。CHA型ゼオライト(AlPO4-34)の前駆体だが、局所的に6配位構造を持っている事が結晶構造解析の結果、判明した。こんなの無かったよねぇ!という事で、論文投稿へ。実は論文投稿の原稿【案】に、この前駆体の名前が無く、私の実験ノートのページ番号と私の名前を合わせて、「kom023」としばらく呼んでいた。世界デビューに向け、新しくGAM-1(Gifu university aluminophosphate materials)と命名。論文発表後すぐに、このGAM-1は専門図書(洋書)に掲載され、紹介された。

以降、このGAMという名が活躍することになる。

多孔質材料の新奇な触媒性能

K. Komura, Yu Nakano, and M. Koketsu, Green Chem., 13, 828-831 (2011)

化学工業日報(2011年6月23日)

解説

エステル化やアミド化のような縮合反応は、平衡反応であるため、どちらかの反応基質を過剰に加え、生成物系へと平衡をずらすか、生成する水を系中から除去することが求められる。我々は、酸とアルコール、またはアミンを等モル量用いたエステル化、アミド化反応の検討を行った。アミド化反応で使用する触媒を検討した結果、不思議なことに、酸触媒、プロトン型イオン交換樹脂、固体酸触媒など、ブレンステッド酸触媒ではなく、シリカ(SiO2)組成のメソポーラスシリカが最も高い触媒活性を示すことを明らかにした。メソポーラスシリカとは、1994年にNature誌で紹介され、爆発的に注目された材料である。ゼオライトの細孔は~1 nm程度であるのに対し、メソポーラスシリカは数十nm~数百nmの細孔を持つ非晶質シリカである。細孔を持たない非晶質なシリカビーズでは、充分な触媒活性は無く、細孔を持つことが高い触媒性能を発現するために必要であることが分かった。反応後の分離回収が容易で、触媒活性を維持したまま再利用が可能である事が分かり、とてもグリーンでエコだ!ということで、Green Chemistry誌に投稿、すぐに掲載決定となった。

M. Tamura, D. Murase, and K. Komura, Synthesis, 47, 769-776 (2015).

M. Tamura, D. Murase, and K. Komura, Chem. Lett., 45, 451-453 (2016)

D. Murase, and K. Komura, Adv. Pour. Mater., 4, 150-156 (2016).

その後、この触媒反応系について詳しく検討した。その結果、触媒活性点がメソポーラスシリカの壁に存在するシラノール基であること、反応速度が酸濃度の擬一次に、アミン濃度にはゼロ次に依存こと、反応速度に限界値があること、また、簡単なER反応機構を当てはめることで活性化エネルギーを求めた。(上図) 興味深いことに、メソポーラスシリカの単位シラノール密度あたりの反応速度が、メソポーラスシリカの細孔径によって変化することが分かった。一様に細孔径に依存するのではなく、メソポーラスシリカの高次構造の違いで、それぞれ反応速度の細孔径依存性が異なることが分かった。(下図)

 

メソポーラスシリカの細孔内には、剝き出しのシラノール基(Si-OH)が、おおよそ1個/nm2ある。このシラノール基に有機官能基を修飾担持することで、固体触媒としての機能を新しく付与することができる。我々は、メソポーラスシリカ(MCM-41)に、N-methylaminopropyl基(MAP)を固定化担持させたMAP-MCM41が、knoevenagelに続いて、マイケル反応を進行させる、3成分連続反応の触媒として有用であることを見出した。所定時間の後、同じフラスコに次の試薬を入れることで連続的に反応を行うことから、ワンポット(one-pot)反応とも呼ばれる。

K. Komura, Y. Mishima, and M. Koketsu, Applied Catal. A: General, 445446, 128-132 (2012).

新しい固体触媒としての機能を付ける

 

解説

CDS-1ゼオライトは、2004年に発表された新規合成ゼオライトである。我が国で2番目の新規合成ゼオライトであり、天然ゼオライトの一つフェリエライト(FER)と似た構造をしていることから、フェリエライトファミリーとして認識されている。CDS-1ゼオライトは、前駆体であるPLS-1を空気雰囲気下焼成することで、層間にあるシラノール基が脱水縮合し、細孔を持つゼオライトとなる。少々変わった手法で得られるゼオライトである。オリジナルのCDS-1ゼオライトの化学組成はSiO2のため、単純な分子ふるい作用、吸着特性は発現するが、固体酸性を持たない。我々の研究室では、このCDS-1ゼオライトに触媒としての機能を付与することを目的に、CDS-1ゼオライトの骨格中に種々の元素を導入する事に成功している。

[B]CDS-1: K. Komura, T. Murase, Y. Sugi, and M. Koketsu, Chem. Lett., 39, 948-949 (2010)

[Ga]CDS-1: H. Suzuoki, S. Takegawa, and K. Komura, J. Jpn. Petrol. Inst., 57, 184-191 (2014)

[Ge]CDS-1:T. Murase, and K. Komura, J. Porous Mater., 23, 11-17 (2016)

[Ti]CDS-1:T. Murase, and K. Komura, J. Porous Mater., 24, 203-209 (2017).

その後、前駆体PLS-1の合成法として、粘土鉱物であるカネマイト(H-kanemite)を使用する合成法が発表された。(上図) ゼオライト合成としては、非常に面白い手法である。原料のカネマイトは単純なシリケート層が積層した粘土鉱物であるが、前駆体のPLS-1は、同じく層状ケイ酸塩ではあるが、構造が少々複雑かつゼオライトがもつ局所的な構造を持っていることから二次元ゼオライト(2D-zeolite)と呼ばれる。

PLS-1の層間シラノール基の距離が適切であった事が幸いで、CDS-1ゼオライトは新たに生まれた。なぜなら、CDS-1ゼオライトの[001]方向と、フェリエライトの[010]方向の骨格構造は同じで、CDS-1の[010]方向から見ると分かるが、フェリエライトの層構造とCDS-1は、1/2周期ずれているだけである。

我々は、オリジナルのSiO2組成のCDS-1ゼオライトの合成法を改良し、DGC(Dry Gel Conversion)での合成法を確立した。従来よりも大きな粒子のPLS-1が合成でき、合成日数の短縮も可能となった。

DGC法によるCDS-1ゼオライト合成:S. Banno, and K. Komura, Cryst. Res. Tech., 1800036 (2018)

近年では、このDGC法によるCDS-1ゼオライト合成を、一般的なゼオライトの化学組成であるアルミノシリケート(Al2O3/SiO2)骨格へと適応させ、アルミニウム含有CDS-1ゼオライト([Al]CDS-1)の合成に成功した。この[Al]CDS-1は、固体酸を持つことから、メタノールから低級オレフィンを合成する反応(MTO反応)への触媒応用を行った。

Manuscript under preparation

ゼオライト水熱転換法

ゼオライト水熱転換法とは、ゼオライトを合成するための原料にゼオライト(親ゼオライト)を用いる合成手法である。上記の例は、親ゼオライトとしてFAU型ゼオライト使用し、BEA型ゼオライトを子ゼオライトとして生成する図である。ゼオライトの結晶生成過程のメカニズムは、未だ詳細に分かっていない。この方法では、原料の骨格構造が既知であるので、何かしらの結晶生成過程が分かるのではないか?と期待されている。明確に生成過程が分かると、ゼオライトの様な機能材料のテーラーメイド合成が可能となり、現在の生活をより一層、迅速に豊かにすることができます。

解説

ゼオライトは、クォーツや宝石の様な安定相に存在する物質ではなく、熱力学的に準安定相(metastable)に存在する鉱物類とされている。(上図) ゼオライト水熱転換法は、準安定相に存在する物質から、準安定相の物質へと変換するする化学手法と言い換えられる。すなわち、構造転換過程に於いて熱力学的支配の影響を出来るだけ小さくし、速度論的支配が有利に働く条件で構造転換をさせなければいけない。また、親ゼオライトの分解速度と子ゼオライトの生成速度のバランスも重要な因子であり、どちらかが早くても遅くても、準安定相にある子ゼオライトを単一結晶として生成させる事が出来ないミスマッチ(miss-match)な構造転換となる。

ゼオライトのエネルギーマップの拡大部分!準安定相中に存在するゼオライトも、その種類のよって生成エネルギーが当然だが違う。一般的に、ゼオライトの骨格密度(framework density)が密(dense)の方が、安定なゼオライトとして認識されている。水熱転換法では、親ゼオライトとして骨格密度が「疎」なゼオライトから、「密」な子ゼオライトへと構造変化するのが、エネルギー的に有利で一般的とされている。

ちなみに、

ゼオライト水熱転換法で使用している学術的な表現は、未だに統一されていない。世界の著名な学者たちが色々な表現で水熱転換法に関わる表現をアピールしています。例えば、親ゼオライト(parent zeolite)&子ゼオライト (child zeolite)という表現。親ゼオライトについては、いくつかの論文で使用されていましたが、子ゼオライトという表現は、小村が世界で最初に学術論文で使用し、公式な学会でも使用しました。しかしながら、世界的に使われている用語は、daughter zeoliteで、日本人としては、なぜ娘?と思っているが、child zeoliteと表現してもクレームはありません。また、水熱転換のマッチ、ミスマッチという表現も、小村が初めて学会誌で使い始めました。只今、この表現を世界的に広めたいと思っております。

AlPO系ゼオライトの水熱転換法 (izcAP法)

ゼオライト水熱転換法は、ゼオライト科学の歴史的な背景もあり、アルミノシリケート(Al2O3/SiO2)を化学組成に持つ親ゼオライトが主な研究対象であり、今も変わらない。我々の研究室では、1982年に新しいゼオライト化合物として紹介された、リン酸アルミニウム(Al2O3/P2O5)を化学組成に持つゼオライト(総じてAlPO系ゼオライト)を親ゼオライトとした水熱転換法を検討している。

K. Komura, H. Aoki, K. Tanaka, T. Ikeda, Chem. Commun., 56, 14901-14904 (2020)

解説

リン酸アルミニウム組成で、最も一般的なゼオライトであるAlPO-5(AFI)を親ゼオライトとして、ピロリジン存在下、水熱転換を行ったところ、新しいゼオライト前駆体結晶GAM-2が生成した。また、含有する有機物を除去するため、空気雰囲気下で焼成を行ったところ、さらに構造がトポタクティックに変化し、新しいゼオライトGAM-3が生成した。新規合成ゼオライトについてはこちら

結晶構造解析の結果、GAM-2とGAM-3はともに新規合成ゼオライトであることが分かった。AlPO系ゼオライトを親ゼオライトとして使う水熱転換法を小村が新しく「izcAP」(InterZeolite Conversion of AluminoPhosphates)と命名した。

ゼオライトの合成は、エネルギー的に限られた領域での化学合成である。これまでにゼオライトのような多孔質無機物質が、複数回(この場合は2回)構造を変えて得られた例は無く、この論文のタイトルとしても採用するほどの世界初の学術的事例である!

ゼオライト水熱転換は、骨格密度が「疎」から「密」なゼオライトへと構造転換するのが一般的である。しかし、AlPO-5 → GAM-2の構造転換では、親ゼオライトであるAlPO-5の骨格密度がFDAFI=17.3であるのに対し、子ゼオライトであるGAM-2の骨格密度は、計算するとFDGAM-2=16.2であった。そう!この構造転換では「密」から「疎」へと従来とは異なるかたちで進行することが分かった。すなわち、熱力学的支配ではなく、完全な速度論的支配で進行していることになる。文献を探した結果、世界で2例目の極めて稀有な結果であることが分かった。

一方で、GAM-2 → GAM-3のトポタクティックな構造転換は、熱のみがエネルギー源であることから、完全に熱力学的支配によって進行し、GAM-2の骨格密度より「密」なゼオライトへ(GAM-3)と構造転換している。

GAM-7
これまでの構造転換から得られたGAM-2~GAM-6は、有機構造規定剤として環状第2級アミンを用いていました。今回新たに、非環状第2級アミンのジイソプロピルアミンを用いて水熱転換を行ったところ、未知のXRD回折パターンを示す結晶へと水熱転換することが分かりました。順番で言うと「7番目」なのでGAM-7と命名しました。この物質は、空気雰囲気下で焼成すると構造崩壊を起こし非晶質となります。リン酸アルミニウムは、非常にバラエティーのある骨格を形成する結晶なのですが、このように耐熱性や化学安定性に乏しいのが残念です。しかし、これもリン酸アルミニウムの特徴として捉えて頑張りましょう!結晶構造解析の結果、GAM-7はジイソプロピルアミンがリン酸アルミニウムシートの層間にパッキングされた、新しい有機-無機ハイブリッド結晶であることが分かりました。この層状シートは、ヒドロキシル基(POH)が互いに層間へ向き合っているため、OSDAの窒素部位と強い水素結合で構造を維持している物質です。

メタロAlPO系ゼオライトの水熱転換法 (izcMAP法)

リン酸アルミニウムを主成分として、骨格に他の元素を一部導入した(メタロアルミノリン酸塩:MeAPO系)ゼオライトは、固体酸や導入された金属元素の特長を発揮することから固体触媒として応用研究が行われている。我々は、固体酸を発現するSi元素、酸化触媒への応用が注目されるCo元素が導入されたSAPO-5、CoAPO-5ゼオライトを中心に親ゼオライトとした水熱転換法の検討を行った。

MeAPO系ゼオライトを親ゼオライトとしたIZC法を、我々は「izcMAP(InterZeolite Conversion of Metallo-AluminoPhosphates)と名付けている。

GAM-4
AlPO4-5の骨格にケイ素原子を同形置換させたSAPO-5を親ゼオライトとして、ピロリジンを用いて水熱転換を行ったところ、新しい多孔質結晶が得られた。これを新たにGAM-4と命名した。GAM-4の特徴は、4配位、5配位、6配位のアルミニウム原子から骨格構造が形成されている点である。しかし、マイクロ細孔を持っているが、GAM-4のように4配位以外の原子を骨格構造に含む物質は、定義上ゼオライトではないとされている。新しい多孔質物質なのに!!っと思っても仕方がない。リン酸アルミニウム系の物質には、このような「ゼオライトの様な物質」の報告例が多く、ゼオライト類似物質(zeotype)と呼ばれる。

新規ゼオライト類似物質GAM-4の構造
GAM-4のユニットセルの構造

K. Komura, H. Aoki, T. Ikeda, J. Porous Mater., 29, 583-590 (2022)

GAM-5PとGAM-5
AlPO4-5やSAPO-5をそれぞれピロリジン存在下でIZCを行うと、GAM-2およびGAM-4がそれぞれ生成した。同じトポロジーの親ゼオライトだが、骨格の化学組成の違いで、違う新規物質が得られることは驚きである。では他の化学組成の親ゼオライトでは???是非とも試してみたい!っと思うのは当然だと思う。

次に、コバルト原子が同形置換したCoAPO-5を親ゼオライトとして、ピロリジン存在下でIZCを行った。その結果、既知ゼオライトのCoAPO-21(AWO)が生成した。このCoAPO-21は、空気雰囲気下焼成することで、構造がさらに変化しCoAPO-25(ATV)ゼオライトと呼ばれる物質となった。こちらも同様に前駆体をGAM-5P、焼成後のゼオライトをGAM-5と命名した。このGAM-5P(AWO)は、骨格構造に3員環を含む構造的に面白いゼオライトとして知られている。

さて、このGAM-5PとGAM-5。なぜ既知なのに命名したの?と疑問に思うかもしれない。次の解説をどうぞ!

現在、IZAのHPに記載されているATV型ゼオライトの結晶情報は、ゼオライトの骨格元素であるリンとアルミニウムが交互に配列されたモデルではない。次の「おはじき」を例に!ゼオライトなどの2元素系酸化物は、一般的に構成元素が酸素原子を介して交互に配列する。おはじきを平面上で二つ交互に配置するためには、この場合、ユニットセルに4つ交互に置くことで可能になる。(右図) しかし、配列の外観(おはじきの色を無視して並べる)は、左図のように並べた場合でも右図と同じである。これまでのATV型ゼオライトの結晶構造は、外観(骨格構造)だけ決定したもので、構成元素の並びまでは決定していない。おはじきの例では左図。
我々がizcMAP法で合成したGAM-5は、構成元素が交互に配列する結晶モデルを可能にする結晶が含まれており。これまでの物質とは違うため新しく名前を付けました。

K. Komura, E. Imai, T. Ikeda, Micropor. Mesopor. Mater., 344, 112245-112253 (2022)

GAM-6
CoAPO-5(AFI)を、ピロリジンを用いて水熱転換を行うと、GAM-5Pが得られる。(上記) 違うアプローチとして、メチレンが1つ増えた第2級環状アミンであるピペリジンを使って水熱転換を行ったところ、全く新しい結晶物質ができた。新しくGAM-6と命名した。結晶構造解析の結果、GAM-6は10員環の細孔を、[100]と[110]方向にもつ(10員環2次元細孔)新規多孔質物質であることが判明した。骨格構造やSEM像をみると、粘土の様な層状化合物に見えるが、Al-O-Al結合を介して3次元的な骨格構造を有している。

GAM-6は、層間の結合としてAl-O-Alを、また、骨格中に6配位Al原子を持つことから、GAM-4と同じく新規ゼオライト類似物質である。骨格の2種類の6配位Al原子を中心に置くと、GAM-6の構造は二つの構造ユニットから出来ていることを明らかにした。我々は、構造ユニットの特徴から「砂時計」構造、「プロペラ」構造と名付けて論文発表を行った。

現在、新規ゼオライト(GAM-3)、新規ゼオライト類似物質(GAM-4)、GAM-5(ATV)は、結晶構造解析の結果から多孔質結晶であることを示している。一般的にゼオライトの様な多孔質物質の特徴として、比表面積の大きさがある。(詳しくはこちら) しかしながら、これまでの新規結晶は、充分な比表面積を持っていない。考えられる理由として、これら多孔質物質は、含有されている有機物(OSDA)を除去するため、焼成処理を行う。リン酸アルミニウムは、熱安定性に乏しいため、この処理の間で部分的な構造崩壊に伴う細孔閉塞を起こすと考えられる。が、詳細に焼成の条件を検討した結果、GAM-6に多孔質物質としての特徴(高い非表面積)を持たせることに成功した。さらに、含有させたCo原子により、固体酸性を示すことも分かった。実際に、GAM-6を用いて、簡単なクラッキング反応を行ったところ、固体酸としての触媒性能を持つことも分かりました。

そう!我々は、izcMAPにより、新規の骨格構造をもった、多孔質固体酸を開発することに成功しました! 今後は、GAM-6がもつ、Co原子の性質と多孔質性を利用して、新しい材料としての応用研究に期待しています。

K. Komura, E. Imai, K. Oka, T. Ikeda, Chem. Commun., 59, 11680-11683 (2023)

to be continued